大判例

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東京地方裁判所 昭和53年(ワ)8269号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

3 右2の認定事実によれば、本件土地は農地であるから、松男が本件使用貸借契約により権利を取得するには、農業委員会の許可が必要であり、許可なしには、その効果を生じないものであるところ(農地法三条一項本文)、松男が右許可を得た事実は認められない。従つて、本件使用貸借契約によつても、松男は適法な耕作の権原を取得せず、事実上本件土地を耕作するにとどまつていたにすぎないものである。

しかも、昭和五〇年春頃本件使用貸借契約が締結され、その頃その引渡があつたものであるから(前示2(一))、野菜類耕作という目的に従つた使用収益をなすに足る期間(民法五九七条二項但書)も、昭和五二年秋までにはすでに経過していたものと言うことができる。

したがつて、被告は昭和五二年秋には、いつでも松男に対して本件土地の返還を求める権利を有していたことになる。

右の各事実及び前示2(六)ないし(一〇)の事実を合わせ考えれば、本件離作補償契約は松男の強迫に因り締結させられたものであり、また公序良俗にも反すると認めるのが相当である。

すなわち、被告が約四〇〇万円の債務の返済資金の調達並びに袋地化によつて本件土地の換価価値が低落することを免れるために、その売却に踏み切つたところ、本件売買契約中の特約条項により、松男が本件土地の返還を拒むときは、被告は右債務返済資金を入手できなくなるだけでなく、新に四〇〇万円の違約金支払債務を負担し、しかも本件土地の爾後の換価が困難になるという窮地に立つことに乗じて、松男は、適法な耕作権が無く、又被告の返還請求が使用収益期間経過の点からも適法なものであるのに、耕作権があると強弁し、金員の支払を約束しないと返還に応じないとの態度を示し、これを断るときは被告に経済的に大きな損害が及ぶことを暗に示唆して強迫し、もつて「迷惑料」名義で一〇〇万円の支払を被告をして約束させたものと認めることができる。

してみると、被告の本件離作補償契約取消の抗弁は理由があり、原告の同契約に基づく一〇〇万円の請求はその余の点について判断するまでもなく失当である。

(山本和敏)

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